それは、何の変哲もない土曜日の朝のことでした。前の晩に見た映画の話を家族としながら、いつものようにトイレに入りました。用を足し、洗浄レバーをひねると、ゴボゴボという音とともに水はいつも通り流れました。しかし、その後に続くはずの、「シュー」というタンクに水が溜まり始める音が、いつまで経っても聞こえてきません。最初は気のせいかと思いましたが、しばらく待ってもタンクは沈黙を保ったまま。不審に思い、もう一度レバーを操作しようとしましたが、軽くスカスカとした手応えがあるだけで、当然ながら水は流れません。タンクが完全に空になっているのです。一瞬にして、平穏だった週末の朝が、焦りと不安に包まれました。まず頭に浮かんだのは「故障」の二文字。修理にはいくらかかるのだろう、今日中に直るのだろうか、といった心配事が次々と湧き上がってきます。ひとまず落ち着こうと、スマートフォンで「トイレ 水 たまらない」と検索し、表示された対処法を片っ端から試してみることにしました。最初に確認したのは、トイレの隅にある止水栓。これは固く閉まっておらず、正常に開いているようでした。次に、人生で初めて、重い陶器製のタンクの蓋を開けてみました。埃をかぶった複雑な機械が目の前に現れ、少し気圧されましたが、調べてきた知識を元に、水面に浮いているはずの「浮き球」を探しました。すると、浮き球のアームが、給水ホースに微妙に引っかかり、一番下に下がった状態で動かなくなっているのを発見しました。どうやら、長年の使用で部品の位置が少しズレてしまっていたようです。指で軽くそのアームを正しい位置に戻してやると、その瞬間、堰を切ったように勢いよく水が流れ込み始め、タンクはあっという間にいつもの水位に戻りました。ほんの些細な原因でしたが、あの時の安堵感は今でも忘れられません。この一件以来、私はトイレの構造に少し詳しくなり、トラブルに冷静に対処する自信がつきました。
突然トイレの水が止まったあの週末の話