住宅の排水トラブルの中でも、意外と知られていない、かつ解決が困難なケースが「樹木の根による排水桝の詰まり」です。これは特に、築年数が経過した庭付きの一戸建て住宅において頻繁に発生する問題です。古い住宅の多くはコンクリート製の排水桝を使用していますが、このコンクリート桝には大きな弱点があります。それは、経年劣化によって桝本体と排水管の接続部分に僅かな隙間が生じやすいという点です。植物の根はこの小さな隙間を見逃しません。水と養分を求めて地中を這う根は、湿り気のある排水桝の周辺へと集まり、その隙間を縫うようにして内部に侵入してきます。一度内部に侵入した根は、桝の中で理想的な成長環境を得ることになります。家庭から排出される汚水には窒素やリンといった肥料成分が豊富に含まれているため、根は爆発的なスピードで成長し、桝の中で巨大なスポンジのような塊を形成します。この「根の網」が、本来流れていくはずのトイレットペーパーや生ゴミを絡め取り、強固なダムを作ってしまうのです。こうなると、通常の高圧洗浄機だけでは根を完全に除去することはできず、特殊なカッターを用いた作業や、最悪の場合は桝そのものを掘り起こして交換する大規模な工事が必要になります。この問題の厄介な点は、地上からは全く予兆が見えないことです。庭の木が元気に育っていると思っていたら、実はその根が排水システムを破壊していたという話は珍しくありません。特に桜やケヤキ、柳といった成長の早い樹木や、生命力の強いツツジなどを排水桝の近くに植えている場合は注意が必要です。また、コンクリート桝自体の寿命も通常二十年から三十年と言われており、古い桝を使い続けること自体が詰まりのリスクを高めています。現代の主流である塩化ビニル製の桝は、接続部が接着固定されているため根の侵入を許しにくい構造になっています。もしお住まいの排水桝がコンクリート製で、周辺に樹木があるのなら、詰まりが発生する前に最新の樹脂製桝へ交換することを検討すべきです。それは単なる修理ではなく、住まいのインフラを近代化し、将来的な不安を解消するための賢明な投資と言えるでしょう。
樹木の根が引き起こす排水桝の詰まりと古い住宅に潜むリスク