プロが語る見えないトイレの悪臭源
今回は、年間数百件の水のトラブルを解決する水道修理のベテラン技術者、鈴木さん(仮名)に、一般の方が見落としがちな「詰まっていないのに臭うトイレ」の専門的な原因についてお話を伺いました。「お客様からの相談で、封水を確認しても問題ない場合、我々はまず通気管の不具合を疑います」と鈴木さんは語ります。通気管とは、排水をスムーズにし、管内の気圧を安定させるために、各家庭の排水管から分岐して建物の屋上など屋外まで伸びている配管のことです。この通気管の先端が、鳥が作った巣や、風で飛ばされてきた落ち葉などで詰まってしまうと、排水時に管内の空気が抜けなくなり、その結果、掃除機のように便器の封水を強力に引っ張り込んでしまう現象が起きやすくなります。これが慢性的な封水切れと悪臭の原因となるのです。次に鈴木さんが指摘したのは、便器と床の接合部の問題です。「便器と床下の排水管をつなぐ部分には、フランジパテやゴムパッキンが使われています。これが経年劣化で硬化したり、地震などで便器がわずかにズレたりすると、そこに隙間ができて悪臭が漏れ出してきます。これは便器を一度取り外さないと確認・修理ができないため、専門家でなければ原因の特定は非常に難しいでしょう」。最後に、意外な原因として、便器本体の目に見えないひび割れを挙げてくれました。陶器に微細なクラックが入ると、そこに汚水が染み込み、臭いの発生源になることがあるそうです。プロの診断は、複雑なトイレの構造と、臭いの原因の多様性を浮き彫りにします。