「たかが数滴、ポタポタと垂れているだけだから」という思い込みが、どれほどの損失を招くか、私は身をもって知ることになりました。それは、お風呂の蛇口から始まった小さな水漏れでした。最初は一分間に数滴程度で、寝る前に蛇口を強く締めれば止まるだろうと安易に考えていたのです。しかし、数週間が経つ頃には、どれほど力を込めてハンドルを回しても水滴が止まらなくなりました。それでも私は「パッキンを交換するだけのことだし、時間がある時に自分でやればいい」と、その修理を先延ばしにし続けました。お風呂場は常に水を使う場所だから、多少濡れていても問題ないだろうという油断もありました。ところが、二ヶ月後の水道料金の検針票を見て、私は自分の目を疑いました。普段の三倍近い、数万円という請求額が記載されていたのです。慌てて水道メーターを確認すると、家中の水を止めているはずなのに、メーターの中にある小さなパイロットが、ゆっくりと、しかし確実に回り続けていました。ポタポタと滴る水は、二十四時間、三百六十五日休みなく流れ続けており、積み重なれば数立方メートルという膨大な量になります。さらに追い打ちをかけたのが、湿気による浴室環境の悪化です。絶え間なく続く漏水によって、浴室内の湿度は常に飽和状態となり、掃除をしても掃除をしても黒カビが爆発的に繁殖するようになりました。ついには浴室を通り越して脱衣所の棚や壁紙にまでカビの胞子が広がり、家全体が不衛生な環境に陥ってしまったのです。水漏れを放置するということは、単に水を無駄にするだけでなく、家族の健康を脅かし、日々の掃除の苦労を何倍にも増やす結果を招きます。結局、私は高額な水道代を支払い、業者に依頼して蛇口全体を交換し、さらには脱衣所の防カビ工事まで行うことになりました。あの時、数百円のパッキン交換を惜しまず、すぐに行動していれば、これほどの経済的ダメージと精神的な疲弊を味わうことはなかったはずです。水回りの異変は、どんなに小さくても「即座に対処すべき警告」であることを、忘れてはなりません。