排水設備の修理に長年携わってきた職人の視点から見ると、排水桝の詰まりという問題には、現代社会のライフスタイルの変化が色濃く反映されています。昔に比べて、現代の家庭からは非常に多くの油脂や化学物質が排出されています。食器洗い乾燥機の普及により、高温の洗浄液が大量に流されるようになりましたが、これが排水桝に到達する頃には冷えて固まり、従来よりも強固な詰まりを形成するようになっています。現場で遭遇する最も厄介なケースは、市販の強力なパイプクリーナーを過信して大量投入し続けた結果、汚れが中途半端に溶けて移動し、より深い場所で巨大な栓となって固まってしまうパターンです。私たちプロが現場に到着したときには、すでに配管がパンパンに膨れ上がり、どこから手をつけても汚水が噴き出すような緊迫した状態であることも珍しくありません。また、最近の住宅で主流となっている塩化ビニル製の桝は、コンクリート製に比べて汚れがつきにくいのは事実ですが、一度詰まりが発生すると密閉性が高いゆえに圧力が逃げ場を失い、室内側への逆流が激しくなる傾向があります。職人としてアドバイスしたいのは、年に一度は必ず外の排水桝にバケツ一杯の水を勢いよく流し、流れを確認してほしいということです。これだけで、軽微な汚れなら押し流すことができます。また、清掃業者を選ぶ際は、単に安さを強調するのではなく、管内カメラなどの診断機器を保有し、詰まりの原因を映像で見せてくれる業者を選ぶのが賢明です。原因を知ることで、今後の生活習慣をどう変えればよいかが明確になるからです。排水桝の詰まりは、住まい手と設備の対話不足から生じる「病気」のようなものです。定期的な診断と適切な処置さえあれば、排水桝は半永久的にその役割を果たし続けてくれるのです。しかし我々の仕事はあくまで起きてしまった問題を解決することであり本当の住まい管理は住人自身が排水桝という設備を愛着を持って見守ることから始まると考えています。見えない場所だからこそ誠実に向き合い定期的に汚れを掻き出すそのひと手間が結果として数十年後の家の寿命を左右し余計な出費を防ぐ唯一の道であることを多くの人に理解してほしいと切に願っています。
排水桝の詰まり修理の現場から届ける熟練職人が語る知られざる真実と対策